"Rabbit and Hare Dance"

2020
mixed media


『ウサギと野ウサギのダンス』

2020
ミクストメディア

北アイルランドには現在もプロテスタントとカトリック間での紛争が度々起きている。普段は平和に暮らしている人たち が何かの折にお互い溜め込んでいたものを爆発させるように紛争を起こす。 2019年から2020年春までのうち5ヶ月間を北アイルランドで過ごした。幸い紛争に巻き込まれることは無かったが、町のいたるところで対立の一面を垣間見ることがあった。滞在したスタジオは元テレビ局建物を利用した北アイルランド最大のアートスタジオで50人ほどのアーティストが自分の部屋を持っていた。それだけメンバーがいるので当然カトリックの人間もいればプロテスタントの人間もいて、少なからず僕のような外国人もいた。北アイルランドがあるアイルランド島は自然が豊かなことでも知られておりアイルランド島には現在2種類のウサギが生息している。所謂「野ウサギ」と「ウサギ」というやつで野ウサギはアイルランド島の在来種であり、ウサギは12世紀にスペイン人によって持ち込まれた外来種である。野ウサギとウサギの関係はカトリックとプロテスタントの関係に似ている。カトリックは元々アイルランドにある宗教でプロテスタントはイギリスより持ち込まれた宗教である。在来種と外来種という関係は元々アイルランド島に住んでいたアイリッシュの人々と後から入植したイギリス系の人々や移民の関係に置き換えることも出来る。野ウサギとウサギの操り人形はそれぞれアイリッシュの人と異国から来た僕によって十字の操作盤を用いて操られている。ウサギを現地のプロテスタントではない僕が操作した理由は僕自身が余所者であり、プロテスタントの学校に通っていた過去があるからである。舞台は北アイルランドの伝統的な家の中で2匹のウサギはその中で伝統的なアイリッシュダンスを踊っている。使われている音楽は元テレビ局のスタジオでかつてテレビ番組用に録音されたものである。時折衝突しながらも仲良く踊るウサギ達はダンスを通して対話しているように見える。

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